前回の補足

 前回、表題に「二つのこと」と書いたのに、不思議な体験は一つしか書いていなかったことに気づいたので、補足としてもうひとつのことを書いておきます。

 こちらは前回のようにはっきりした出来事ではないのでうまく伝えられないかもしれません。

 あれは私が小学校6年生くらいのころでした。時期は1972年から1973年ころのこと。母と弟と私は母の仕事の都合で山口の片田舎に引っ越して間もないころです。私は新しい学校や新しい環境になじめず、おまけに第一次オイルショックの真っ只中で母子家庭にとっては経済的に厳しい生活を強いられていました。私はいろいろとストレスが重なって、重いジンマシンや皮膚病を年中患っていました。

 そんなある夕方、季節は4月下旬から5月くらいの暖かいときだったと思います。母と弟と私は三人連れ立って自宅に帰る途中のことでした。路地の奥に家があったのですが、もうあと10メートルもすればつくというとき、家々の屋根の向こうに灼熱した鉄球のようなものが音もたてずにすーっとこちらのほうに向かって飛来してくるのを目撃しました。目視ではサッカーボールくらいの大きさに見えました。西の空を低空で滑空してそのまま屋根の向こうに沈んでいきました。この間わずか5秒くらいでしたでしょうか。私は思わず「あれ何?」と声を挙げたのですが、そのときはもうこの物体は消えてしまっていて、母も弟もそれを見ることはなかったのです。

 翌日、私は新聞に隈なく目を通したのですが、どこにも隕石が落下したなどという記事はありませんでした。当時、私はそれが隕石であることを疑いませんでした。なので、少なくとも数百メートル離れた距離でサッカーボールくらいの大きさに見える赤黒い物体の正体が隕石ならば、相当大きな隕石に違いなく、新聞記事にならないわけはないと決め込んでいたのです。

 不思議なのは、その見えていた数秒間、相当近くを飛んでいたのにちがいないのに、風を切る音がまったくしなかったことです。まるで空というスクリーンに映像を見るような具合でした。それでも、その物体はとてもリアルでしたし、あくまで自然現象の一部であり、火の玉のような超常現象とは思われませんでした。

 ひとつの解釈としては、思春期に差し掛かるころの私の心理状態がそのような不思議な物体を外界に投影した結果自分に見せたのかもしれないという説ですが、それにしても、あの物体はとてもリアルすぎて、たんなる心理の外界への投影と言われても、心の奥底では納得できません。

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